「矛盾」とは、世界の発展の原動力である

田坂広志氏講演(2009/4/18未来を考えるフォーラム) 
「未来を予見する 5つの法則」 光文社刊
事例 企業における「利益追求」と「社会貢献」の矛盾 
矛盾のマネジメント  「割り切らない」「矛盾を止揚する」「振り子を振ってバランスを取る」 
なぜなら、こうした「矛盾」に対して、機械的に「割り切って」しまうと、生命力が失われてしまうからです。例えばもし、「企業にとって利益追求がすべてだ」と割り切ってしまうと、短期的に企業の業績は上がるかもしれませんが、世の中からは「志の無い企業」と見られ、社会的評価は下がっていきます。そして、それにともなって、社員の働き甲斐も失われ、長い目で見ると、企業の生産性や創造性も失われていきます。
しかし、一方で、「企業にとっては、社会貢献がすべてだ」と割り切ってしまうと、あしもとが疎かになり、利益が上がらなくなるため、企業として存続できず、その高邁な理念そのものも実現できなくなってしまいます。
このように、企業にとっての「矛盾」とは、ある意味で、それがあるからこそ、企業の「生命力」が生まれるのです。
止揚:互いに矛盾し、対立するかに見える二つのものに対して、いずれか一方を否定するのではなく、両者を肯定し、包含し、統合し、超越することによって、より高次元のものへと昇華していくこと。 
あたかも二つの極を往復する「振り子」のように、互いに対立し、矛盾する二つのものの間で「振り子」を振り、バランスを取ることです。
「矛盾」を機械的な「割り切り」によって解消してしまうと、「矛盾」とともに、「生命力」や「原動力」も消えてしまい、進歩や発展が止まってしまうのです。 
これは、この世の中のすべてに当てはまる、「理」なのです。