拍子を合わせる


武道では、本来どんな状況変化にも対応できるように、外部からの未知の入力に対して
常に「ドアをあけておく」ことが構えの基本だ。・・・・

例えば、相手に腕をつかまれたときに、それを邪魔なものとして振り払おうとするのではなく、
そこにできあがった共同体的な身体に運動エネルギーを備給してもらったと感謝の気持ち
で受け容れる。これを武道の伝書では「拍子を合わせる」「拍子を取る」という言い方をする。
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相手をふりほどき、再び自由を回復することを目的とする限り、一人で動いているときより、
鈍重で、不如意で、不快なものとなる。むしろ、相手と出会い、二つの身体が絡み合っている
状況そのものを前提として受け容れ、そこから「この共同的身体で何ができるか?」と問う方
が生産的になるのだ。

内田 樹 (うちだたつる)氏
武道家  
The Big Issue Japqn 71 「身体のすごいところは、他者とつながることができるということなんです。」 より抜粋