未来世代からのメッセージ
(代筆 中村隆市)

を紹介します。
 


未来世代からのメッセージ

 わたしたちは、これから日本に生まれてくる者たちです。
これから数百年、数千年にわたって、日本に生まれてくることを
みんな、わくわくして喜んでいました。 
 
 しかし、今年3月に青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場が
放射能を空と海にすてはじめてからは、誰も日本に生まれることを
うれしく思えなくなりました。 

 来年の夏からは、さらに大量の放射能をすてはじめると聞いて
わたしたちの誰もが日本には生まれたくないと思うようになりました。
これまでは、原発で事故が起こっても「放射能の漏れはありません」
という報道にホッとしていました。しかし、再処理工場からは日常的に
放射能が放出されています。

 大気中には、高さ150mの排気塔からガス状の放射能が排出され
海には沖合3km深さ44mの放出口から放射性廃液がすてられています。

 2007年夏に再処理工場が本格稼動をはじめた場合、大気中には
クリプトン85という放射能が、チェルノブイリ原発事故で放出された量の
10倍も放出され、これによって年間100人以上がガンで亡くなると推測
されています。海には、トリチウム※やヨウ素などの放射能が、2日に1回
600トンも放出されます。200kgドラム缶に換算すると、1回に3000本、
月に4万5000本、年間では54万本にもなります。

 その結果、魚がトリチウムによって1年間で300ベクレル/kg汚染されると
青森県が認めています。チェルノブイリ原発事故のあとに放射能汚染食品が
大量に輸入されるようになったとき、国がこれ以上放射能で汚染されたものは
輸入しないと決めた数値が370ベクレル(セシウムという放射能)でした。

※トリチウムが水や水蒸気の形で身体に入ると99パーセント吸収されます。
トリチウムは身体をつくるタンパク質や脂肪などに取り込まれることがあります。
そうなると、体内被曝が続きます。遺伝子DNAに取り込まれると、放射線を
出しながら崩壊してヘリウムになるため、遺伝子が切断され、遺伝子異常を
起こして様々な病気を起こします。被曝や染色体の切断による遺伝的作用、
精子および卵巣への影響、ダウン症、新生児の死亡、小児白血病、そして、
若い世代の皮膚ガンや腫瘍など、数々の被害が報告されています。

 みなさん! 六ヶ所村の再処理工場をストップさせて下さい。
わたしたちが生まれてくる日本をこれ以上放射能で汚染しないで下さい。

 
<安倍晋三 様>

  あなたが主張されている「愛国心、誇りの持てる国」をつくるために
愛する日本の国土を海を大気を放射能で汚染しないでください。
「美しい国、日本」を汚さないで下さい。

 放射能は日本だけでなく世界を汚染します。「世界に信頼され、
尊敬され、愛される」ために再処理工場を止めて下さい。
あなたの愛国心を言葉だけでなく行動で示して下さい。


<小沢一郎 様>

  あなたが主張されている新しい国づくりの理念「共生」を考えるときに
これから生まれてくる私たち未来世代との「共生」も忘れないで下さい。
「人間と自然との共生、地球環境の保全を日本が率先して進める」ために
まず、再処理工場を止めて下さい。


<すべての国会議員の皆様>

  わたしたちは、あなたがた議員の皆さんが、目先の経済だけでなく
未来世代の幸せを考えた政治を行なってくださることを祈っています。
所属する政党の方針に盲従するのでなく、自分の頭で考え、こころに
従って行動して下さい。


<メディアで働く皆様>

  数千億円ではなく兆の単位でお金が動いている巨大な工場が、
放射能を大気中と海中に放出し続けています。しかし、日本人の
ほとんどは、この重要な問題を知らないままです。

 新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などメディアで働く皆さん
再処理工場に関する事実を勇気をもって報道して下さい。
「戦争賛美の報道をすること」と「再処理工場の報道をしないこと」は
同じ意味をもっています。


<科学者の皆様>

  再処理工場の問題は、いまの時代だけでなく、これから数千年、
数万年後の未来世代にも影響を与える大問題です。
「放射能の放出は、わずかな量だからまったく問題ない」という
科学者の主張によって、放射能の放出が続けられています。
この問題を「自分の専門分野とは違うから」と放置しないで下さい。


<アーティスト・表現者の皆様>

 この問題をできるだけ多くの人に知ってもらうためには
皆さんの表現力が必要です。
どうか、子どもたちとこれから生まれてくる者たちのために
この問題を共に考えて下さい。


<いま日本に住み、日本で生きている皆様へ>

 今から25年以上も前のことですが、1980年に日本政府は
原発から出る「低レベル放射性廃棄物」を太平洋に棄てようと
計画しました。その計画を知った太平洋の島々は猛反対しました。
それに対して日本政府は、「低レベルの放射能だから心配しなくて
大丈夫ですよ」と説明しました。

 しかし、彼らは納得しませんでした。「安全だというのなら東京湾に
棄てればいいではないか。何故、遠い太平洋にまで持ってくるのか」と
首をたてに振りませんでした。

 長い間、核実験によって海と島を汚染されてきた彼らは、これ以上
海を汚したくない、これ以上海を汚してしまったら子どもたちが生きて
いけなくなると反対運動を続けました。その思いは国際世論を動かし
ついに日本政府は、放射能を太平洋に棄てることを中止しました。

 六ヶ所村の再処理工場から棄てられる放射能は(1年分だけでも)
太平洋に棄てようとした放射性廃棄物(ドラム缶で5000本〜1万本)の
50倍から100倍になります。

 いま、日本に生きている皆さんでなければ、再処理工場をストップ
させることはできません。
 皆さんは、これから生まれてくる私たちの運命を握っています。
 どうか、日本と地球をこれ以上放射能で汚染させないで下さい。

 (代筆 中村隆市) 



【中村隆市さんプロフィール】
1955年福岡生まれ。19歳で水俣病と出会い、公害問題、環境問題に関心を持ち始める。 環境保護の市民運動に関わりながら、有機農業見習い、廃品回収業などを経て、 80年から7年間、生活協同組合にて有機農産物の産直運動に取り組む。 86年、チェルノブイリ原発事故をきっかけに生協を退職し、有機農産物産直センターを設立。 その後、中南米の有機コーヒーやアジアの有機紅茶などをフェアトレードで輸入する (有)有機コーヒーと (株)ウインドファームを設立。98年から「有機コーヒーフェアトレード国際会議」を日本、ブラジル、エクアドルで開催。2000年、ブラジルに初めてのオーガニックカフェを開店。

ビジネスの展開と平行して、原発事故被害者の医療支援を行う「チェルノブイリ友の会」「非電化・有機工業運動」「ワールドエコロジーネットワーク」などのNGO代表を務める。 この十年「いのちを大切にする仕事」を広めるために、南米を含め十数社の会社設立に関わり、 若い経営者たちとの協働を楽しんでいる。 2004年1月、米軍の先制攻撃を支持した国の人間として責任を感じ「イラク医療支援基金」を立ち上げ、 2004年5月、スロービジネススクールを開校する。


久嶋