「ゆっくり」でいいんだよ
終わりに ハチドリのひとしずく
・・・・ぼくたち人間は、すべての生きものの中で最大の力をもつようになった。・・・
、残念ながら、その力はしばしば、人間同士傷つけ合ったり、自然環境を壊したりすることに使われてきた。でも幸いなことに、人間は、問題を問題として自覚することができる。そしてその気になれば、問題を解決する方法をあみ出し、計画をたて、それを行動にうつすこともできる。
みんなで力を合わせて水のしずくをたくさん集め、燃えている森の火を消すだけの能力をもっている。
環境破壊、水不足、地球温暖化、戦争、飢餓、貧困、原発の危険・・・・。ぼくたちの生きている世界は深刻な問題でいっばいだ。しかしぼくには、それらの重大な問題にもまして大きな問題があるという気がしてならない。それは、「これらの問題に対して、自分にできることなんか何もない」とぼくたちがあきらめを感じ始めていること。もしもぼくたちのうちに広がりつつあるこの無力感を吹き払うことができたら、つまり、「いや、自分にもできることがあるんだ」と思えたら、その瞬間、ぼくたちの問題の半分はもうすでに解決しているのではないだろうか。
では、問題のあとの半分を解決するためにぼくたちにできることは何か。もちろんぼくには「ぼくにできること」しかできない。クリキンディが水のしずくを一滴ずつ落とすように、ぼくたちは、「自分にもできることがある」という小さな希望の芽を、周囲からの励ましを栄養としながら、自分のうちに育てていくしかない。それが実を結ぶにはきっと長い時間がかかる。スローなんだ。近道はない。しかしそれでもいい。あせっちゃいけない。
ゆっくりでいいんだよ。
辻 真一著 ちくまプリマリー新書
「ハチドリ計画」 私にできること http://www.hachidori.jp/story.html